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学校教育におけるタブレット学習の功罪

学校教育におけるタブレット学習の現状とデメリットを整理した上で、特に読解力低下の要因と具体例について詳しく解説します。


現状:学校教育におけるタブレット学習の導入

タブレット端末を活用した学習は、以下のように進化しています:

  1. デジタル教科書の普及
    • 紙の教科書に代わる電子教科書が導入され、検索機能や音声読み上げ機能などの利便性が向上。
  2. 学習アプリの利用
    • ゲーミフィケーションを取り入れた学習アプリや、個別最適化学習を可能にするAIが活用されている。
  3. オンライン授業の一般化
    • 新型コロナウイルス感染症の影響で、タブレットを用いた遠隔教育やハイブリッド学習が普及。
  4. 政府の支援
    • 日本の「GIGAスクール構想」など、ICT教育の推進政策により、1人1台のタブレット配布が実現している。

タブレット学習のデメリット

  1. 視力低下や身体的影響
    長時間の画面使用による眼精疲労や姿勢の悪化。
  2. 集中力の低下
    通知やアプリの存在が学習を妨げる。
  3. 手書き・筆記能力の低下
    キーボード入力に依存することで、書字能力が低下。
  4. デジタル依存症
    長時間使用による習慣化。
  5. 読解力の低下
    デジタル特有の情報の受け取り方が、深い読解や批判的思考を妨げる。

読解力低下の要因

特に注目すべきは、タブレット学習が読解力の低下を引き起こす要因です。以下に詳しく説明します。

1. スクロール型読書の普及

タブレットやスマートフォンでは、画面をスクロールしながら文章を読む形式が一般的です。この形式では、次のような読解力低下が起こりやすくなります:

  • 線形的読解の欠如
    紙媒体では、一冊の本を最初から最後まで読む「線形的」な読解が行われますが、デジタル端末では断片的に情報を拾い読みする「非線形的」な読解が主流になります。これにより、物語や論理の全体構造を把握する力が低下します。
  • 記憶力への影響
    ページをめくる感覚がないため、文章の構造を頭に定着させにくいとされています。

事例: ノルウェーの教育機関による研究では、紙の教科書で勉強した生徒のほうが、タブレットで学習した生徒よりも内容理解度が高いという結果が示されています。


2. マルチタスク学習の弊害

タブレットでは、学習中に他のアプリやインターネットにアクセスしやすい環境が整っています。このため、学習者が以下のような行動を取ることが増えます:

  • 集中力の分散
    学習中に通知や他のアプリに気を取られ、文章の細部を見逃す。
  • 深い理解への障害
    複雑な文章や長い文章を読むのが苦手になる。

事例: アメリカのカリフォルニア大学による調査では、タブレットでマルチタスクを行った学生は、紙媒体で集中して学習した学生に比べ、読解テストでの成績が20%低いという結果が報告されています。


3. 視覚優位なコンテンツへの依存

タブレットでは、動画や画像など視覚的に魅力的なコンテンツが豊富であるため、文章を読む時間が減る傾向があります。これにより、以下のような影響が生じます:

  • 読書習慣の衰退
    動画や短いテキストで満足し、深い読書や考察を避けるようになる。
  • 語彙力の低下
    簡単な表現や短い文章しか読まなくなることで、複雑な表現に対する理解力が低下する。

事例: 日本の文部科学省が実施した調査では、タブレットを頻繁に使用する生徒ほど、読書時間が短く、読解力テストの点数が低い傾向があることが確認されています。


4. 批判的思考の欠如

タブレット学習では、インターネット上の情報を簡単に検索できますが、情報の正確性や信頼性を吟味する力が育ちにくいです。これにより、以下の問題が生じます:

  • 表面的な理解に留まる
    深く考えずに情報を受け入れてしまい、根拠を求める習慣が形成されない。
  • 複数の視点を持つ力の欠如
    情報が断片的に提示されるため、多角的な視点で考察する力が育ちにくい。

事例: アメリカのスタンフォード大学の研究によると、高校生の多くがインターネット上のニュースを見た際、その情報の出所や信頼性を十分に評価せずに受け入れてしまうという結果が出ています。


まとめと提言

タブレット学習は教育に大きな利便性をもたらす一方で、読解力低下のリスクが存在します。これに対処するためには、以下の取り組みが重要です:

  1. 紙とタブレットの併用
    紙媒体での読書や学習を継続し、線形的な読解力を育てる。
  2. 深い学びを促す指導
    単なる情報収集ではなく、批判的思考や多角的な視点を養う授業設計。
  3. マルチタスク防止の環境整備
    学習専用モードの利用や通知制限で、集中力を維持。
  4. 読書習慣の推進
    デジタル以外の読書体験を積極的に推奨し、読解力向上を図る。

タブレット学習は、紙媒体の学習と補完的に活用することで、読解力低下の問題を克服し、より効果的な学習環境を構築できると考えられます。

 

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